こんにちは、㈱MMOLにて、AI & ロボティクス インプリメンターをしている三木です。
今日は、AIと工学に携わる技術者として、半導体メモリーのことが気になり、調べていたところ、「正確で分かりやすい技術図解」で理解を深めたくなりました。
そこで、日進月歩、進化が目まぐるしい今のAIでどこまで実現できるか、試してみた内容を記事にしてみました。
はじめに:ふと感じた素朴な疑問
昨日、2026.01.19(No.2324)日経ビジネスの「中国AI覇権のリアル(フィジカルAI・半導体・量子・宇宙、特許で分析)」特集を立ち読みしていたときのことです。
P.18〜21の半導体メモリー(DRAM、HBM、NAND)の記事に目が留まりました。
そこで、ある疑問が湧きました。
「なぜNANDという名称なのだろう?」
電気電子工学に携わってきた者として、今更でお恥ずかしいのですが、この疑問が頭から離れませんでした。DRAMとHBMは略語を日本語訳すれば文字通りの意味なのに対し、NAND(NAND型フラッシュメモリ)だけは様子が違います。もしかして論理回路のNAND(否定論理積)回路に基づいているのでは?
この素朴な疑問から始まった探求が、思いがけず「AIによる技術図解生成」の実験へと発展していきました。
画像生成AIの技術的背景と実験動機
テキストに基づいた内容に対し、ある程度、自由度を持たせて生成させる場面、
いわゆるイメージ図、模式図、フローチャートなどでは、AIはすごく有用です。
一方で、科学、工学の領域でテキスト表現だけでは、どうしてもブレてしまう内容を図示したい場面、
いわゆる設計図、回路図、解剖図などでは、イマイチになってしまう。
ここにジレンマを感じていました。
この理由は、現在の画像生成AI(Diffusion Modelなど)が、学習データの中から「もっともそれらしいピクセルの並び」を確率的に予測して画像を生成しているためです。
「イメージや雰囲気」を分かりやすく伝えるための図には、AIの特性が強力に発揮されますが、「科学・工学的な正確性」が求められる図には、現状の一般的なモデルでは限界があるのです。
テキスト(プロンプト)だけでは、工学的な図面に必要な「空間的な位置関係」や「機能的な因果関係」を正確に定義しきれない。
現在の生成AIは、意味や雰囲気を扱うのは得意ですが、論理や物理法則を厳密に再現しているわけではないという技術的背景から、言えることだと思います。
つまり、工学的な設計図、回路図を現在のAIで生成したい場合。
オリジナリティ・独自性が高いほど、精緻に生成すること、様々な制約条件をロックして調整することは、難しいです。
しかし、今回、専門的な内容ではあるものの、ある程度、世の中で確立され汎用性がある回路図であれば、正確性をキープしたものを生成できるのではないかと思い至りました。
ChatGPTとの対話:半導体メモリーの定義を整理
疑問を深堀りする前に、ChatGPT 5.2を利用し、3つのメモリーの定義を整理しました。
(こちら記事の本題ではないので、ご興味と違っていましたら次のセクションにお進みください。)
🔸DRAM(Dynamic Random-Access Memory)
●何をするもの?
・主にプログラムの実行中に一時的なデータを保存するメモリーです
・例:アプリの動作中に使う作業領域
●特徴
・揮発性メモリ:電源を切ると中のデータは消えます
・高速アクセス:CPUやGPUが必要とするデータを高速に読み書きできます
・PCやスマホの「メモリ(RAM)」に使われるのは基本的にこれです
●例えるなら
・人間の「短期記憶」のようなもので、今すぐ処理・参照するデータを置いておく場所です
🔸HBM(High Bandwidth Memory)
●何をするもの?
・DRAMを縦に積み重ねて超高速・高帯域でアクセスできるようにした次世代型のメモリです
●特徴
・高い帯域幅(データ転送量)を実現し、GPUやAIアクセラレータ、スーパーコンピュータなどの大量データ処理に強い
・一般的なDRAMよりも一度に大量のデータを高速で扱えるため、AIやHPC(高性能計算)用途に最適
・構造はチップを3Dに積み、内部を直接接続するので効率が高い
●例えるなら
・普通の道路(DRAM)に比べて多車線の高速道路のように、大量データを一気にさばくための専用路線です
🔸NAND(NAND Flash Memory)
●何をするもの?
・電源オフでもデータが消えない不揮発性のメモリーで、データの長期保存に使われます
●特徴
・SSD、USBメモリ、スマホの内部ストレージなどで一般的
・DRAMより読み書き速度は遅いですが、大容量・低コストで保存に向いています
●例えるなら
・人間の「長期記憶(アルバムなど)」のように、電源が切れてもデータを残すための保存場所です
ChatGPTの説明は、比喩表現を交えた簡潔なもので、大変分かりやすいものでした。
Google検索AIモードとの対話:疑問を深堀りする
続けて、NANDという名称の由来について、Google検索のAIモードに相手をしてもらいました。
すると、やはりNAND回路と関係があることが分かりました。
(こちらも記事の本題ではないので、ご興味と違っていましたら次のセクションにお進みください。)
(1)対話スタート
私の質問:「NAND型とは、NAND回路と関係ある?」
AIの回答(要約):
はい、NAND型フラッシュメモリの名前は「NAND回路(否定論理積)」に由来しています。メモリセル(データを記録する最小単位)がどのようにつながっているかという「回路の並び方」が、論理回路のNANDの構造と似ているため、そう呼ばれています。
・直列構造: NAND型メモリでは、複数のメモリセル(トランジスタ)が直列(数珠つなぎ)に並んでいます
・論理動作の一致: この直列に並んだすべてのセルが「オン」になったときに初めて、全体の回路に電流が流れます。この「すべての入力が満たされたときに反応する」という仕組みが、論理回路のNANDゲートと同じ動作原理に基づいています
(2)しかし、新たな疑問が
私の質問:「NAND型メモリの論理動作は、NAND回路というよりAND回路という気がしてしまうのですが、私の理解不足でしょうか?」
この質問に対する回答で、より深い理解が得られました。
AIの回答(要約):
ご指摘の通り、「すべてのセルがオンになったときに電流が流れる」という物理的な振る舞い自体は、論理学的には「AND(論理積)」の動作そのものです。質問者様の感覚は非常に鋭く、決して誤解ではありません。
それにもかかわらず、なぜ「NAND型」と呼ばれるのかには、電子回路(CMOS)における電圧の反転という背景があります。
(3)なぜ「AND」ではなく「NAND」なのか
①セルの状態(入力): メモリセルにデータが書き込まれていない状態(ビット線が導通する状態)を「1」とみなします
②回路の導通: 直列に並んだすべてのセルが「1」であれば、回路がつながり、出力側の電圧が地面(GND)に落ちて「0(Low)」になります
③論理判定: つまり、「すべてが1のときに出力が0になる」という動作であり、これは論理ゲートのNAND(Not AND)の真理値表と一致します
この説明により、物理的な直列接続(AND的)と、電気的な出力の反転(NOT)が組み合わさって「NAND」と呼ばれることが理解できました。
(4)さらに深い理解へ
対話を続ける中で、「回路が通電すると、出力側の電圧が下がる仕組み」についても詳しく教えてもらいました。
●プルアップ回路の仕組み:
①電源(高電位): 最初、ビット線(読み出し線)にはあらかじめ電圧がかけられています(プルアップされた状態)
②メモリセルの列(スイッチ): 複数のセルが直列に並んでおり、これが一つの大きなスイッチの役割をします
③グランド(0V): 回路の反対側は地面(GND)につながっています
●動作のプロセス:
①導通したとき(全セルが「1」): すべてのメモリセルが「ON」になると、ビット線からグランドまでの通り道が完成します。すると、溜まっていた電気が一気にグランドへ流れ落ちるため、出力側の電圧はほぼ0V(Low)に低下します
②遮断されたとき(いずれかが「0」): 一つでも書き込み済みのセル(OFF状態)があると、電気の通り道が途切れます。電気はグランドへ逃げることができないため、出力側には高い電圧(High)が残ったままになります
この対話を通じて、NANDという名称の由来と、その動作原理について深く理解することができました。
AIによる技術図解の課題:分かりやすさと正確性のジレンマ
ここまでのやりとりで、NANDフラッシュメモリーについての個人的な理解は深まりました。しかし、新たな欲求が湧いてきました。
誰が見ても、直感的かつ正確に理解できる図解をAIに作ってもらいたい!
こう思う背景には、日頃から社内外の方々とのコンセンサス(合意形成)や社内の組織知化を図りたい場面で、分かりやすさに偏りすぎて、正確性から離れすぎてしまうことへのジレンマがあります。
分かりやすさと正確性を両立させた図をAIに生成させたいのに!
・イメージ図、模式図、フローチャートなどでは、AIはすごく有用
・しかし、設計図、回路図、解剖図など、科学・工学の領域で正確性が求められる図では、AIの出力がイマイチになってしまう
大抵の場合、分かりやすさはあるけれど、正確性が大きく削がれてしまいます。結局、それらしいことが出力されたけれど、知りたい肝心なことがボヤける。それどころか、何を示しているのかよく分からなくなってしまうのです。
もちろん、私のAIへの指示の出し方が悪い、AIの使いこなしが未熟という側面はありますが、それだけなのだろうかという疑問と共に、何とかならないだろうかと思っていました。
何も深く考えず、やってみようという精神だけで、実験してみることにしました。
実験:4つの方法で技術図解に挑戦
今回の文章のはじめから前述の思いの丈までのテキストを、何も考えず丸ごとそのまま、以下の4つに渡してみました。
(1)Gemini上のNano Banana
(2)NotebookLMのインフォグラフィック
(3)NotebookLMのスライド資料 1回目
(4)NotebookLMのスライド資料 2回目
その上で、(1)〜(3)には、プロンプトの先頭へ「添付の(以下の)メモの内容を参考にして、NAND型メモリの回路が通電すると、出力側の電圧が下がる仕組みを、分かりやすい回路図で示して。」とお願いしてみました。
(4)は、NotebookLMに登録したソースに基づくだけで、何も明示的な指示を出さずに、スライド資料を生成してみました。
実験結果(1):Gemini上のNano Banana(回路図作成の指示あり)
●評価:技術的な正確性 ★★★★★ / 分かりやすさ ★★★☆☆
技術的にとても正確な回路図を出力してくれました。
●良かった点:
・プルアップ抵抗、メモリセル(トランジスタ)、グランドの関係が正確に表現されている
・STATE 1(非導通)とSTATE 2(導通)の2つの状態を並べて比較できる
・電圧の変化(HIGH/LOW)が明確に示されている
●改善の余地:
・技術者向けには十分だが、初学者には少し複雑かもしれない
実験結果(2):NotebookLMのインフォグラフィックス(回路図作成の指示あり)
●評価:技術的な正確性 ★★☆☆☆ / 分かりやすさ ★★★★☆
回路図として正確ではないですが、直感的に伝わりやすい表現はできています。
●良かった点:
・視覚的に分かりやすく、色分けも効果的
・電源、メモリセル、グランドの関係が一目で理解できる
・非技術者でも概念を掴みやすい
●改善の余地:
・正確な理解を目指す立場に立つと、やや分かりにくい印象
・回路図としての正確性には欠ける
実験結果(3):NotebookLMのスライド資料 1回目(回路図作成の指示あり)
●評価:技術的な正確性 ★★★★★ / 分かりやすさ ★★★★★
全12ページの内、3ページ分を抜粋しています。本実験の中で、技術的な正確性と分かりやすさの両面で最も優れた出力をしてくれました。
●良かった点:
・段階的な説明で理解が深まる構成
・「書き込み」と「消去」の前提知識から始まり、論理的な流れがある
・状態A(遮断)と状態B(導通)を明確に対比
・回路図が正確でありながら、シンプルで理解しやすい
・電流の流れを矢印で視覚化
・日本語の説明が丁寧で分かりやすい
●特に優れていた点:
・フローティングゲートへの電子の出入りという物理現象から説明
・「書き込む=電子を入れる=電気を通らなくする=データ0」という論理の流れが明確
・ビット線のプルアップと電圧降下の関係を正確に図示
実験結果(4):NotebookLMのスライド資料 2回目(回路図作成の指示なし)
●評価:技術的な正確性 ★★★☆☆ / 分かりやすさ ★★★★★
全12ページの内、4ページ分を抜粋しています。
明示的に回路図作成の指示をせず、ただソースとして登録したメモに基づいて、スライド資料を作成してもらっただけです。そのため、ソースを包括した内容となり、技術的な正確性よりも分かりやすさに重点を置いた資料となりました。
●良かった点:
・AI覇権の全体像から半導体メモリーの位置づけを示す俯瞰的な視点
・DRAM、HBM、NANDの役割分担を例えで説明
・水タンクの例えなど、非技術者でも理解しやすい工夫
・一部のページでは技術的な正確性も維持(4枚目のフローティングゲートの説明など)
●改善の余地:
・全体的な概要説明に重点が置かれ、具体的な回路動作の詳細は薄い
・技術者が求める詳細な理解には物足りない印象
実験からの気づき:AIとの対話と目的に応じた使い分けの重要性
実験を通じて、各ツールの特性と適切な使い分けが見えてきました。
現時点では、大きく下記のような使い分けがお薦めと考えています。
●目的に応じた使い分けの実例
・ケース1:社内の技術研修で使う場合
→(3) NotebookLMのスライド(回路図指示あり)が最適。
段階的な説明と正確な図解で、参加者の理解を深められる印象のため。
・ケース2:経営層への技術説明の場合
→(4) NotebookLMのスライド(回路図指示なし)が最適。
ビジネスの文脈から始まり、技術的な詳細に入る前に全体像を示せているため。
・ケース3:技術文書やマニュアルに掲載する場合
→(1) Nano Bananaが最適。
正確性が最優先される場面では、この出力が最も信頼性が高い印象のため。
・ケース4:ブログ記事やSNSでの情報発信の場合
→(2) インフォグラフィックが最適。
1つの画像での視覚的なインパクトが大きく読者の興味を引く印象のため。
まとめ
今回の実験で最も印象的だったのは、AIに対しても本気で粘り強く思いの丈を伝えると、かなり期待に応えてくれるということでした。
電気電子工学の中でも、今回取り扱った電子回路の内容は分かりにくい印象がありましたが、AIにも思いが伝わったのか、特に(1)Nano Bananaと(3)NotebookLMのスライド(1回目)では、分かりやすさと正確性を両立した回路図、説明資料を出力してくれて、個人的には感動しました。今までよりも、AIとの関係に幅が広がった気がします。
一方で、日頃からAIに触れていながら、人と人との関係と同様に、親睦、歩み寄りが足りなかったなと反省しています。
今回の実験を通じて、以下のことが重要だと感じました。
①背景や文脈を丁寧に伝える
単に「回路図を作って」ではなく、なぜその図が必要なのか、どんな課題があるのかを共有する
②期待値を明確にする
「分かりやすさと正確性の両立」といった具体的な要件を伝える
③対話を重ねる
一度で完璧な出力を求めるのではなく、段階的に改善していく姿勢
④ツールの特性を理解する
それぞれのAIツールの得意分野を把握し、使い分ける
NotebookLMはスライドもインフォグラフィックも、画像ファイルとして出力されるため、直接編集をできない難点はありますが、社内外で提示する資料のパーツとして利用したり、社内チームで組織知を醸成したり、という場面では大変有用なツールと感じました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
AIという強力なパートナーと共に学びを深め、そして社内外で携わる方々と知見を共有していくことの価値を、改めて感じた実験でした。
今後も、自分なりに試してみたこと、そこから感じたことなどを発信していきます。
「人は足りないが採用費は高い」
「特定の人に業務が集中している」
など、お悩みがございましたら、どんな小さなご相談からでも構いません。
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