こんにちは。株式会社MMOLの三木です。
AIエンジニアとして、主にAI・自動化に関する業務を担当しています。
年末商戦に向けたECサイト上の準備や対策はもうお済みですか?
年末商戦期は、小売業にとって最も忙しい時期と言っても過言ではありません。
ECサイトでは注文が急増し、顧客からの問い合わせも通常期の約1.8倍に達するとの報告があります。(出典:Hiver Inc. | 5 Winning Holiday Time Customer Service Strategies)
売上を伸ばす大きなチャンスであると同時に、問い合わせに対する人的リソースや準備が不足していると、顧客満足度の低下や機会損失に繋がってしまいます。
こうした状況を解決する鍵となるのが、AIチャットボットの戦略的な活用です。
本記事では、繁忙期を乗り切るための導入ポイントと効果的な運用方法をご紹介します。
1. 繁忙期に直面しやすい課題
① 問い合わせ量の急増
特に下記のような内容の問い合わせが増加します。
・在庫 / 配送状況の確認
・ギフト対応(ラッピングやのし)
・返品 / 交換
・年末年始の営業時間
人的対応だけでは、電話がつながりにくい、メール返信が遅れるなど、顧客体験の悪化につながります。
② 24時間対応へのニーズ
深夜や早朝のオンライン利用者が増え、常時対応が求められる機会が増加します。しかし、24時間体制で人員を配置することはコストや運営面の負担から現実的ではありません。
③ 繁忙期特有の問い合わせ
「クリスマスまでに届きますか?」や「年内最終の配送日は?」など、定型的でありながら時期特有の質問が多く寄せられます。人的対応のみでは情報共有や教育の遅れが顧客体験の低下に直結します。
2. AIチャットボット導入の5つのメリット
こうした繁忙期特有の課題をAIチャットボットは包括的にサポートします。導入することで企業は以下の効果を享受できます。
① 24時間365日の即時対応
顧客は深夜や休日でも即座に回答を得られるため、「購買意欲が高い瞬間」を逃さず、コンバージョン率向上にもつながります。
② 大量の同時対応
人間のオペレーターが一度に対応できる顧客は限られますが、AIは多数の問い合わせを同時に処理でき、混雑時間帯でも待ち時間を削減し、顧客体験を維持できます。
③ 一貫した正確な情報提供
AIは最新の設定内容に基づき、常に統一された回答を提供します。対応品質のばらつきがなく、顧客に安定したサービス体験を届けます。
④ 人的リソースの最適活用
定型的な問い合わせはAIが担い、複雑な対応や感情的なフォローは人間が担当する。この役割分担により、オペレーターは顧客対応に集中できます。
⑤ データ活用による改善
顧客とのやり取りはログとして蓄積されるため、よくある質問や混雑時間帯などをデータ分析できます。これらの評価結果は業務効率化や商品・在庫改善に活用できます。
3. 効果的な導入のためのポイント
① 人とAIの役割の明確化
AIを「人間の代替」ではなく、「人間の能力を拡張するツール」と位置づけましょう。
導入初期のフェーズでは、定型的な質問や顧客全般に共通する問い合わせのみをAIが担当し、それ以上に複雑な質問や顧客固有の内容については人間のオペレーターが対応します。
このような役割分担によって、AIチャットボットに最初に実装すべき機能が明確化されるため、導入プロセスの混乱を抑え、スムーズな導入を可能にします。
② 適切なプラットフォームの選定
世界には数多くの会話型AI構築プラットフォームが存在します。下記はその中でも、日本の企業にとって使いやすく、AIチャットボットの構築からWebサイト設置までを比較的スピーディーに実現できるツールの例です。
③ 応答ルールと振る舞いの設計・制御
ベースとなる汎用 LLM を選び、応答ルール・処理フロー・禁止事項など振る舞いを設計・制御します。応答の一貫性と安全性を保つため、AIが答えられない内容とそれに対する応答ルールもあらかじめ用意しておくことが重要です。
④ RAGを通じた外部データ活用の方式検討
RAG(検索拡張生成)とは、ユーザー(顧客)の問い合わせに応じてAIモデル(汎用LLM)が関連性の高い外部データを抽出し、その情報をもとに回答を生成する仕組みです。
例えば、「返品の仕方」という質問があったとします。
“RAGなしのAIモデル(汎用LLM)”では、一般的な内容を答えてしまうのに対し、”外部データを利用するRAG”は、FAQなどのデータ内を探索して「未開封は30日以内。開封済みは対象外です(FAQリンク)」のように根拠付きで回答するイメージです。
AIチャットボットに利用してほしい各EC・小売ブランドの「独自情報」や「常にアップデートされる情報」は、外部データから検索・参照させる仕組みが必要です。
RAGの特徴は、必要な情報を学習するのではなく、必要な時に参照して利用する点にあります。
RAGにおける検索方法の選択では、導入初期で定型的な質問や顧客全般に共通する問い合わせを対象とする場合、「ベクトル検索」が最適です。
ベクトル検索は従来のキーワード検索と異なり、例えば「プレゼントにおすすめの商品は?」のような曖昧な質問にも意味的に類似する情報を検索でき、文脈に即した柔軟な回答が可能です。自然言語での問い合わせに非常に適した検索方法です。
⑤ 外部データの整備と品質管理
本記事では詳述しませんが、データ形式には非構造化データ、半構造化データ、構造化データなど複数の種類があります。
定型的な質問や顧客全般に共通する問い合わせに回答することを前提とする場合は、以下のような情報をテキスト主体で準備することが有効です。(非構造化データに該当します)
・商品説明文
・決済 / 配送ポリシー
・年末特有の情報
・FAQ集
miiboやチャネルトークはいずれもベクトル検索に対応するベクトルデータベースを標準搭載しており、スムーズな活用が可能です。
これら①~⑤のポイントに加え、AIチャットボット構築時の注意点として、「最初からすべての問い合わせに対応できる高機能なAIを構築しよう」と考えてしまうケースが挙げられます。導入段階で要求レベルを過度に高めると、システム構成が複雑化し、実際の運用になかなか到達できないという事態に陥りがちです。
重要なのは、無理なく小さなステップから運用を始め、段階的に機能を拡充していくことです。人の成長と同様に、AIチャットボットもPDCAサイクルを回し続けながら継続的に改善することが成功の鍵となります。
4. 人間のオペレーターとのシームレスな連携
現段階では、AIがすべての顧客サポートを担うのではなく、AIが「回答できない / 分からない」と判断した場合に速やかに人間のオペレーターに引き継げる仕組みが重要です。
「チャネルトーク」を例に挙げると、人間のオペレーターが即時に介入できることに加え、社内チームで相談しながら対応できる点で特に有効です。
5. まとめ
人手不足が深刻化する今、テクノロジーを活用した顧客サポートは、顧客の期待に応え競争優位性を確保するための、もはや選択肢ではなく必須事項となりつつあります。
この年末、業務改革の第一歩として、AIチャットボット導入による新たな顧客体験の創造に挑戦してみてはいかがでしょうか。
私たちMMOLは、お客さまの想いや現場の実情を理解し、AI導入から運用改善まで伴走して支援いたします。
ご不明点やお困りごとがありましたら、ぜひお気軽にMMOLまでご相談ください