仕事を減らすための施策が、仕事を増やしていないか

仕事を減らすための施策が、仕事を増やしていないか

|佐藤明日美

会社を変えようとすると、新しいものが増えていきます。

AIを導入する。新しいツールを入れる。
会議を始める。研修を行う。
プロジェクトチームを立ち上げる。

どれも、会社をよくするために始めたことです。

ところが気づけば、以前からあった仕事はほとんど減っていない。
新しい施策だけが既存業務の上に積み重なり、変革を進める人ほど忙しくなっている。

そんなことはないでしょうか。


変革のための仕事が増えていく

先日、ある企業の管理部門の方とお話ししていると、こんな話が出ました。

社内では複数の改善施策が動いている。AI活用も進めたい。組織のあり方も見直したい。

ただ、施策が増えていくうちに、「そもそもこれは何のためにやっているんだっけ」と整理し直す必要が出てきたそうです。
推進するメンバーにも通常業務があり、大切だと分かっていても時間を割けない状況もありました。

私たちが企業のご相談を伺う中でも、似た状況に出会うことが多くあります。

変革というと、私たちはつい「何を始めるか」を考えます。新しい仕組みを導入した方が、変化が目に見えるからです。
経営側から見ても、取り組みを説明しやすい。

一方で、「何をやめるか」は後回しになりがちです。
その結果、会社を軽くするはずだった取り組みが、現場にとっては新しい仕事として加わっていきます。


AI化できることとAI化する意味

この問題は、AI活用でもよく発生します。

「全社でAIを使おう」と方針が決まると、それぞれの部署でAIを使える業務を探し始めます。

もちろん、試してみなければ分からないこともあります。
ただ、すでに仕組み化されていて大きな負担になっていない業務まで、AIに置き換える必要があるでしょうか。

先ほどの企業との会話でも、すでに自動化されている業務について「これを改めてAIでやる意味があるのか」という話になりました。
逆に、まだ人が時間を取られている別の業務には改善の余地がある。

ここには大きな違いがあります。

AI化できることと、AI化する意味があることは同じではありません。

何ができるかから考え始めると、ツールに仕事を合わせることになります。
先に見るべきなのは、今どこに負担があり、何を変えたいのかです。

AIは、その状態を変えるための選択肢の一つにすぎません。


やめる方が難しい

では、不要な仕事を減らせばいい。
そう簡単でもありません。

今ある業務には、それぞれ今の形になった理由があります。

以前トラブルが起きたために確認工程が増えたのかもしれません。
過去に必要だった報告が、そのまま残っているのかもしれません。
誰が使っているか分からない資料でも、「なくして問題が起きたら困る」と思えば簡単には手放せません。

新しい施策には、「これを始めよう」と決める人がいます。
一方で、仕事をやめるには、「これはもう必要ない」と判断する人が必要です。

だから、足すより引く方が難しい。

変革が進まないとき、「現場が変化に消極的だから」と考えてしまうことがあります。
でも、実際には変わりたくないのではなく、変わるための余白が残っていないこともあるのではないでしょうか。


始める前に確認したいこと

新しいツールや施策を検討するとき、すべての業務を一度に見直す必要はありません。

まずは、次の4つを確認するだけでも変わります。

  1. 何を変えるために始めるのか
    「AIを導入する」ではなく、今どんな状態を変えたいのかを先に決めます。
  2. 今のやり方で本当に困っているのか
    古く見える仕組みでも、現場で問題なく回っているなら残す判断もあります。
  3. 始める代わりに何を減らせるか
    新しい工程を加える前に、報告や入力、確認や会議から不要なものを探します。
  4. 人が担うべき仕事はどこか
    自動化できるかだけでなく、判断や対話など、人が時間を使う意味のある部分を残します。

全部を決めきれなくても構いません。

少なくとも「これを導入したら何ができるようになるか」だけでなく、「代わりに何をやめられるか」まで考える。
それだけでも、施策を増やし続ける状態から抜けやすくなります。


変わる前に軽くする

DXやAI活用という言葉を聞くと、何か新しいことを始めなければならないように感じます。

しかし、変革の目的は新しいものを増やすことではありません。

会社が今より動きやすくなること。人が本来向き合うべき仕事に時間を使えること。
そして、変化が一時的な施策で終わらず、日々の仕事として続いていくことです。

そのためには、何を変えるかだけでなく、何を残し、何を手放すかを決める必要があります。

変化に強い会社をつくるなら、まず変われる余白をつくることが大切です。


MMOLが業務改善やAI活用を支援するときも、新しいツールを入れるところからは始めません。

今ある業務や仕組みを一度棚卸しし、何のために残すのか、何を手放せるのかを整理します。
そのうえで、人が担う仕事とAIや自動化に渡す仕事を切り分け、実際の業務フローに落としていきます。

これは、MMOLが掲げる「変える前に整える」という考え方そのものです。

「AIを活用したいけれど、どこから手をつければいいか分からない」
「改善施策は増えているのに、現場は以前より忙しくなっている」

そんなときは、何を導入するかを決める前の整理からでもご相談いただけます。

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