議事録の作成、マニュアルの整備、社内向けの案内文。
総務やバックオフィスの仕事には、「文章をつくる仕事」が意外とたくさんあります。
こうした仕事は、生成AIと非常に相性がいい分野です。
文字起こしを渡せば議事録にしてくれる。
業務手順を渡せばマニュアルにしてくれる。
伝えたい内容を箇条書きにすれば、きれいな案内文にしてくれる。
実際に使ってみても、「ゼロから文章を書く」という作業はかなり減りました。
一方で、AIが作った文章をそのまま使えるかというと、そうでもありません。
私自身、AIが作った文章を読んで、
「間違ってはいない。でも、こうじゃないんだよな」
と感じて、手を入れることが何度もありました。
では、人はAIが書いた文章の何を直しているのでしょうか。
今回は、議事録・マニュアル・社内文書という3つの例から、実際にどんな「編集」が必要だったのかを整理してみます。
■ 議事録|「何が話されたか」より、「なぜそうなったか」を残す
会議の文字起こしから議事録を作る仕事は、かなりAIに任せられるようになりました。
長い会議でも、発言を整理して、
・決定事項
・検討事項
・担当者
・次回までのタスク
といった形にまとめるところまでは、短時間でできます。
たとえば、AIに会議をまとめてもらうと、こんな議事録ができます。
▼ AIの議事録
A案とB案について検討。
協議の結果、A案で進めることとなった。
詳細については次回の会議で確認する。
事実としては間違っていません。
でも、実際にその会議に参加していた側からすると、残したいのはそこだけではないことがあります。
たとえば、
B案では運用開始後の担当者の負担が大きくなるという意見が出たため、今回はA案を採用。
ただし、A案についても○○の確認が必要なため、次回までに担当者が確認する。
ここまで残しておけば、数か月後に見返したとき、
「なぜB案ではなくA案だったのか」
まで分かります。
AIは、会議で話された内容をきれいに整理してくれます。
一方で、会議に参加した人は、
「ここは今後また論点になりそう」
「この発言は結論より重要だった」
「ここを残しておかないと、後から『なぜこうなったんだっけ?』となりそう」
ということを、会議の空気やこれまでの経緯も含めて判断しています。
つまり、人がやっていたのは文章の修正というより、「未来の自分たちに、何を残すか」を決める編集でした。
■ マニュアル|正しい手順だけでは、初めての人は動けない
マニュアル作成も、AIが得意な仕事です。
業務手順を渡すと、
-
システムにログインする
-
対象のメニューを開く
-
必要事項を入力する
-
内容を確認する
-
申請ボタンを押す
といった形で、きれいに整理してくれます。
以前なら、担当者が一からWordやGoogleドキュメントにまとめていたものが、一気に形になります。
ところが、実際に業務を知らない人の目線で読むと、足りないものが出てきます。
たとえば、
「申請ボタンを押してください」
という説明。
その業務を知っている人には十分です。
でも、初めて操作する人からすると、
「申請ボタンが表示されないんですけど……」
ということが起こります。
そこで実務を知っている人が、
※申請ボタンが表示されない場合は、前月分が未承認になっていないか確認してください。
解消しない場合は○○担当へ確認してください。
と補足する。
こうした一文は、手順そのものからはなかなか生まれません。
「過去にここで何人もつまずいた」
という経験があるから書けるものです。
マニュアルで本当に価値があるのは、正しい操作方法だけではなく、
「ここで間違えやすい」
「この画面になったらどうする」
「判断できなければ誰に聞く」
という部分だったりします。
AIにマニュアルの骨格を作ってもらい、人が**「過去につまずいた場所」を書き足す。**
この組み合わせは、かなり相性がいいと感じました。
■ 社内文書|「正しい日本語」と「伝わる文章」は違う
社内向けの案内文も、AIに作ってもらう機会が増えました。
たとえば制度やルールの変更を伝えたいとき、
「○月から○○の運用を変更します」
と概要を伝えれば、すぐに丁寧な文章を作ってくれます。
誤字脱字も少なく、文章としてはとてもきれいです。
ただ、読んでみると、ときどき違和感があります。
たとえばAIが、
○月○日より新しい運用へ変更いたします。
今後は以下の手順に従ってご対応くださいますようお願いいたします。
と書いたとします。
何も間違っていません。
でも実際には、
「突然変わったと思われそうだから、最初に変更理由を書いた方がいい」
「このメンバーには『対応してください』より、背景から説明した方が伝わる」
「以前にも似た変更があったから、今回はそこも説明しないと混乱しそう」
という判断が必要になることがあります。
そこで、
これまで○○という方法で対応していましたが、△△の負担が増えてきたため、○月から運用を変更します。
お手数をおかけしますが、今後は以下の方法で対応をお願いします。
というように、伝える順番そのものを変える。
ここで編集しているのは、日本語ではありません。
「この人たちには、どういう順番で伝えれば納得してもらいやすいか」
という部分です。
同じ内容でも、相手やこれまでの経緯によって、適切な伝え方は変わります。
ここは、組織の中にいる人が持っている情報が大きく影響します。
■ 3つの文書で、人が直していたところ
こうして振り返ってみると、AIの文章に対して人が直していたポイントには共通点がありました。
議事録では、
「何を記録として残すべきか」
マニュアルでは、
「初めての人がどこでつまずくか」
社内文書では、
「この相手に、どういう順番・言葉で伝えるか」
です。
面白いのは、どれも「文章を書く技術」そのものではないことです。
必要なのは、
会議の背景を知っていること。
過去の失敗を知っていること。
業務を実際にやったことがあること。
その組織や相手を知っていること。
そう考えると、AI時代の「編集」は、文章をきれいにする仕事というより、
AIが知らない背景や経験を、文章に戻していく仕事
なのかもしれません。
■ 「人が直したところ」は、実は会社のノウハウかもしれない
今回、もう一つ気づいたことがあります。
AIの文章を直したとき、その修正をその場限りにしてしまうのは、少しもったいないということです。
たとえば、
「議事録では、結論だけではなく判断理由を残す」
「マニュアルでは、過去に質問が多かった箇所には注意書きを入れる」
「制度変更の案内では、変更内容より先に変更理由を説明する」
こうした修正には、その会社なりの考え方が表れています。
だったら、AIに毎回同じ修正をするのではなく、
「うちでは、こういう文書にする」
というルールとして残しておけばいい。
次にAIへ議事録を作らせるとき、
「決定事項だけではなく、その判断に至った主な理由も残してください」
と最初から指示できます。
マニュアルなら、
「手順だけでなく、初心者が間違えやすいポイントと、困ったときの確認先も入れてください」
と伝えられます。
人が編集した部分をAIへの次の指示に戻していけば、AIの初稿そのものも少しずつ自社向けになっていきます。
これは単なる文章作成の効率化ではなく、担当者の頭の中にあった暗黙知を、会社のルールとして残していく作業でもあります。
■ AIに書かせるほど、「編集する力」が見えてくる
AIを使う前は、議事録もマニュアルも案内文も、「文章を書く仕事」だと思っていました。
でも、実際に最初の文章をAIに作ってもらうようになると、人がこれまで無意識にやっていた仕事が見えやすくなります。
何を残すか。
何を削るか。
どこに補足を入れるか。
誰にどう伝えるか。
ゼロから文章を書く時間が減ったことで、むしろ、こうした判断に時間を使えるようになりました。
AIに文書を作らせたとき、ぜひ一度、
「私は、この文章のどこを直したくなっただろう?」
と振り返ってみてください。
何度も同じところを直しているのであれば、そこには、その会社や担当者がこれまで積み重ねてきた経験が隠れている可能性があります。
そして、それを言葉にできれば、次からはAIにも渡せます。
AIに文章を書かせることは、単に文書作成を速くするだけではありません。
これまで無意識にやっていた「自分たちなりの編集」を見つけるきっかけにもなる。
実際に使ってみて、そこが一番面白い変化だと感じています。
■ おわりに
議事録、マニュアル、社内文書。
AIに任せられる部分は、これからさらに増えていくと思います。
だからこそ、「AIが書けるかどうか」だけを考えるのではなく、AIが作ったものに対して、自分たちは何を付け加えているのかを見ることが大切です。
その小さな修正の中に、長年の経験や、会社独自の判断基準が隠れていることがあります。
まずは一つ、普段作っている文書をAIに作らせてみる。
そして完成した文章ではなく、**「自分がどこを直したか」**を残してみる。
そこから、自社ならではの「編集の基準」が少しずつ見えてくるかもしれません。
MMOLでは、総務・バックオフィス業務におけるAI活用について、単にツールを導入するだけでなく、業務の中にある判断基準やルールを整理し、AIに活かしていくための業務設計も支援しています。
「AIを使い始めたものの、自社ではどう活用すればよいか分からない」という方は、お気軽にご相談ください。