人事制度は、社員が何人になったら必要なのか

人事制度は、社員が何人になったら必要なのか

|佐藤明日美

「人事制度って、社員が何人くらいになったら必要なんでしょうか」
組織が少しずつ大きくなってくると、そんな話が出ることがあります。

10人ではまだ早い。30人くらいから。50人を超えたら必要。
人数を目安にすると、判断しやすいのは確かです。

ただ、人事制度が必要になる境目は、本当に社員数だけで決まるのでしょうか。

ここで考えたいのは、等級や評価、報酬を一式で設計する大がかりな制度だけではありません。
期待する役割や評価のものさしを、複数の人が共有できている状態も含めています。


同じ30人でも状況は違う

人数が少ない会社では、制度がなくても回ることがあります。

経営者自身が日々の仕事を見ていて、「この人はここまでできるようになった」「次はこの役割を任せたい」と判断できる。
本人にも、その場で期待を伝えられます。

評価基準がきれいな文章になっていなくても、日常のやり取りで補えている状態です。

一方で、人数がそれほど多くない会社でも、複数の部署や拠点に分かれていることがあります。
専門領域ごとに管理職がいれば、経営者一人ですべてを見ることはできません。

大きいのは、人数そのものよりも誰が人を見て、誰が判断するのかが変わることなのだと思います。


判断を一人の頭から出すとき

経営者が全員を見ている間は、評価のものさしが一人の頭の中にあっても、ある程度は機能します。

問題が見えやすくなるのは、その判断をほかの人にも渡さなければならなくなったときです。

ある管理職は「自分で考えて動けること」を高く評価する。
別の管理職は「決められた仕事を確実にやり切ること」を重く見る。

どちらかが間違っているわけではありません。
ただ、会社として何を期待しているのかが共有されていなければ、同じ成果でも上司によって評価が変わることがあります。

本人から見れば、「前の上司には評価されたのに、なぜ今回は評価されないのか」が分かりません。

評価制度の設計や見直しに関わった中でも、社員数そのものがきっかけではないケースがありました。
判断を複数の人で共有する必要が出てきたことが、見直しの話につながっていました。

制度が必要になるのは、人が増えたときというより、一人の感覚だけでは会社としての判断を揃えられなくなったときなのかもしれません。


社内では通じていた曖昧さ

この曖昧さは、採用の場にも影響します。

長く働いている社員同士なら、「うちではこういう人が評価される」「このくらいできれば次の仕事を任される」と、明文化されていなくても何となく理解していることがあります。

しかし、外から入る人にはその前提がありません。

「入社後は何を期待されますか」
「どういう人が評価されていますか」
「このポジションの次には、どんな役割がありますか」

候補者から聞かれたとき、面接官によって答えが違う。
あるいは、誰もはっきり答えられない。

採用で困っているから制度をつくる、という話ではありません。
ただ、社内では暗黙の了解で補えていたものが、外から来る人を前にすると説明できなくなることがあります。

それは、会社の中にある判断が、まだ誰かの経験や感覚に頼っているサインの一つです。


最初に作るのは評価表なのか

では、判断が揃わなくなってきたら、評価シートや等級表を作ればいいのでしょうか。

必ずしも、そこから始める必要はないと思います。

先に確認したいのは、会社が普段どんな判断をしているかです。

この役割には、何を期待しているのか。
「できている」と判断するとき、何を見ているのか。
次の役割を任せるとき、何ができるようになっていることを求めるのか。

実際には、こうした判断を会社はすでに何度もしています。
ただ、その理由が経営者や一部の管理職の頭の中にしか残っていないことがあります。

まず必要なのは、新しい評価項目を考えることではありません。
すでに行っている判断を取り出して、ほかの人にも説明できるようにすること。そこからではないでしょうか。

人事制度というと、等級や評価、報酬までを一式で設計する大きな仕組みを想像しがちです。
もちろん、組織の状況によっては、そこまで整える必要がある会社もあります。

一方で、判断のズレが出始めた会社すべてが、すぐに大がかりな制度をつくる必要があるわけではありません。
先ほどの三つに答えられる状態をつくるだけでも、組織の中で使える共通のものさしは増えていきます。

評価シートの形になっていなくても構いません。
誰が説明しても同じ話ができるなら、それはもう仕組みとして働いています。

逆に、判断の中身が曖昧なまま制度の形だけを先につくると、「制度に書いてあるから評価する」という運用になりかねません。

仕組みをつくる前に、何を仕組みにするのかを整理する。
人事制度を考えるときも、その順番は変わらないのだと思います。


人数ではなく判断を渡せるか

人事制度は、社員何人から必要なのか。
その問いに、全社共通の人数で答えるのは難しいと思います。

一つの境目になるのは、
「あの人なら分かっている」で回していた判断を、別の人にも渡さなければならなくなったときです。

経営者から管理職へ。
ある管理職から別の管理職へ。
そして会社から社員へ。

誰が説明しても、期待する役割や成果について大きく違わない話ができるか。

それが難しくなってきたなら、社員数にかかわらず、判断の仕組みを整えるタイミングに来ているのかもしれません。

人事制度を考えるとき、最初に決めるのは評価表の項目ではなくてもいい。
いま誰かの頭の中だけにある判断を、ほかの人にも渡せる状態になっているか。

人数ではなく、そこから考える方が、自社に必要な仕組みは見えやすくなると思います。


判断を取り出すところから

制度の形を決める前に必要なのは、いま社内でどんな判断をしているのかを取り出すことです。

ただ、日々の中で当たり前になっている判断は、中にいる人ほど言葉にしにくいものでもあります。

そこでMMOLでは、業務や役割を整理しながら、その中で繰り返されている判断や期待を言葉にしていく支援をしています。
属人的になっている考え方を、ほかの人にも共有できる形に整えるところから一緒に進めます。

整理を進める中で、等級や報酬まで含む制度全体の設計が必要になった場合は、専門パートナーと連携して対応します。

制度をつくるべきかどうか、まだ決まっていない段階でも構いません。
まずは今の状況を整理したい、というところからお気軽にご相談ください。

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