AIを入れる前に、業務整理はできていますか?
最近、HR領域で「AI-Ready」という言葉をよく見かけるようになりました。
HR領域でも生成AIの導入が一気に進んでいる中で、「ツールを入れて終わり」ではない次のフェーズの話題として、この言葉が広がってきている印象です。
AI-Readyという言葉に出会ったとき、「これは、私たちが普段やっている仕事そのものだな」と感じました。
AI-Readyとは何か
簡単に整理すると、AI-Readyとは「AIを活用できる状態に組織や業務が整っていること」を指します。
HRzineの記事では、その条件として「データの網羅性・鮮度・構造化」の3つが挙げられています。
データが揃っていて、最新で、構造化されている。この3つがそろってはじめて、AIは本来の力を発揮できる。
逆に言えば、データがバラバラで、古くて、形式も統一されていない状態でAIを入れても、思ったような結果は出ない。
当たり前といえば当たり前なのですが、ここをスキップして「とりあえずAI入れてみる」になりがちという現実があります。
言葉は新しいけれど、中身は前からあったもの
「AI-Ready」という言葉自体は新しいですが、やっていることはそれほど目新しくありません。
業務を可視化する。属人化している部分を仕組みに落とし込む。データの形式を揃える。その上でツールを導入する。
──これらは、業務設計やDX支援の文脈で前から言われてきたことです。
私たちが普段「業務の棚卸し」「仕組み化」「AI実装」と呼んでいる一連の仕事も、結果として見れば「AI-Readyな状態をつくる」プロセスになっています。
そう気づいたとき、少しスッキリしました。
これまで「業務設計とAI導入をセットで支援しています」と説明するのに、いつも一手間かかっていたからです。
「AI-Readyな組織をつくる仕事です」と言えば、伝わりやすい。
業界に共通言語ができてきた、ということなのだと思います。
過去の事例を、AI-Readyの視点で振り返ってみる
以前、「『とりあえずAI活用』がうまくいかない理由と、採用現場で気づいたこと」という記事を書きました。
あるクライアントの支援に入ったとき、最初の依頼は「採用を内製化したい」というもので、AI活用がメインの内容ではありませんでした。
採用業務がほぼ外部委託でブラックボックスになっていたので、まずは業務フローの整理から始めました。
誰がいつ何を判断するのか。候補者とのやりとりをどう管理するか。求める人物像をどう言語化するか。それらを一つひとつ整えていきました。
土台ができてきた頃、自然と「この作業はAIで補えないか」「ここは自動化できそう」という話が出てきました。
このとき気づいたのは、業務が可視化されたからこそ「どこをAIに任せられるか」が見えてきた、ということでした。順番が逆だったら、何を効率化すべきかすらわからなかったと思います。
今振り返ると、これはまさに「AI-Ready」な状態をつくっていたのだなと思います。
当時はその言葉を知らなかっただけで、やっていたことは同じでした。
「全部AI化」ではなく「整理してから切り分ける」
業務の棚卸しをすると、面白いことが起きます。
「この部分はAIに任せられそう」「これは仕組み化すれば人が要らなくなる」「これは判断が必要だから人が残る」──こんなふうに、業務が自然と切り分けられていきます。
つまり、AI-Readyな状態をつくることは、すべてをAI化することとは違います。
むしろ、人が判断すべき領域と、仕組みやAIに任せられる領域を明確に分けていく作業です。
「AI活用」と聞くと、なんでもAIに置き換えるイメージを持たれることもあります。
でも実際には、整理したうえで「どこにAIを使うか」を選ぶ、というのが現実的なやり方です。
これから「AI-Ready」を目指す会社へ
AI-Readyという言葉が広がってきたのは、シンプルにありがたいことです。
これまで「業務設計」「DX支援」と分けて説明していたものを、一つの軸で語れるようになる。クライアントとの会話もスムーズになります。
一方で、言葉だけが先行して「AI-Ready対応します」がうたい文句になってしまうと、本来の意味がぼやけてしまうかもしれない。
だから私たちは、業務の棚卸しから始めて、仕組み化と切り分けを一つひとつやっていく。
一見地味に見えるかもしれませんが、その積み重ねが結果としてAI-Readyな組織をつくります。
AI導入を検討している、あるいはすでに入れたけれど思うように機能していない。そう感じているようであれば、まずは業務の整理から一緒にやらせてください。
AIを入れることよりも、入れる前の整理の方が結果を左右します。
順番さえ間違えなければ、AIはきっと強力な味方になってくれます。