採用が回らなくなったとき、多くの会社が業務を外に出すことを考えます。
採用代行に依頼する。ツールを導入する。最近ならAIに任せるという選択肢も加わりました。
ところが、外に出したのに社内の業務が軽くならないという話をよく聞きます。
費用は発生している。作業も減ったはずなのに、採用担当の忙しさは変わらない。
原因を能力や相性に求めたくなる場面ですが、多くの場合は任せ方の設計にあります。
どの業務を外部パートナーやツールに任せられて、何が社内に残るのかが明確でないままだと、任せた分だけ確認と指示が増えるからです。
外に出しても軽くならない採用業務
採用業務を並べてみると、その種類の多さに気づきます。
応募者への連絡、書類の確認、日程の調整、面接官への依頼、評価の回収、記録の更新、条件の調整。ひとつずつは数分の作業です。
このうち外に出しやすいのは、手順が決まっているものです。
日程調整、記録、リマインドなど、手順が決まっていれば人にも仕組みにも任せられます。
問題は手順が決まっているように見えて、実際には判断が混ざっている業務です。
たとえば書類選考は、基準に照らして通すか通さないかを決める作業に見えます。
ところが、その基準が社内で言葉になっていないことがあります。経験年数はどこまで見るのか、業界が違う場合はどう扱うのか。
基準が曖昧なままだと、業務を受け取った側は判断できず、誰かに確認することになります。
確認がくれば、社内で答える人が必要です。答えるのは、たいてい採用担当です。
業務を受け取る側から見えること
MMOLはクライアントの採用担当として現場に入る場合もあるため、業務を受け取る側に立つことがあります。その立場から見ると、任せ方には差があります。
社内に戻さざるを得なくなるのは、多くの場合この2つです。
ひとつは、選考基準が社内で曖昧なまま任されるケースです。
基準がないわけではありません。ただ、明文化されておらず、担当者の頭の中にある。
この状態で受け取ると、判断のたびに確認が必要になります。
もうひとつは、イレギュラーが起きたときの確認先が決まっていないケースです。
想定していなかった経歴の応募があった、候補者から条件の相談を受けた、面接官の予定が急に変わった。こうしたことは必ず起きます。
そのときに誰に聞けばいいのかが決まっていないと、まず聞く相手を探すところから始まります。
反対に、任せ方がうまいと感じる会社には共通点があります。
そういった会社は、判断基準が自社のなかで明確になっていて、そのうえでイレギュラーが起きたときにどういう場合に誰に確認するのかが決まっています。基準と経路の両方が明確な状態です。
任せる前に決めておく4つのこと
判断基準を明文化しましょう、という話はよく聞きます。実際、基準がなければ業務は任せられません。
ただ、基準を作った会社でも業務は戻ってきます。基準に収まらない案件が来るからです。
任せた業務が戻ってくる会社と、戻ってこない会社の違いは、基準の有無ではありません。任せる前に決めていることの量です。
実務のなかで確認しているのは、次の4つです。
1つめは、判断基準です。
何をもって通すのか、何をもって見送るのか。書類選考であれば、必須の条件と望ましい条件を分けておく必要があります。 基準が担当者の頭の中にあるだけでは、業務を任せることはできません。
2つめは、基準の境界です。
基準を言葉にしても、境界に来る案件は必ず残ります。 条件をほぼ満たしているが一部だけ足りない、経歴の解釈が分かれる。こうした候補者の採否は、基準では割り切れません。
基準を決めれば任せられるようになる、という理解は正確ではありません。境界に来たときに誰が決めるのかまで決めて、はじめて業務を任せられます。
3つめは、役割の所在です。
例えば、面接官を誰にするのか、そしてその面接官を誰が選ぶのか。前者は判断で、後者は役割です。
判断基準だけ決めて役割を決めないままにすると、決裁者が毎回変わり、結果として決めたいことが決められません。
4つめは、確認の経路です。
例外が発生したときに、どういう場合に誰へ確認するのかを決めておきます。
これが決まっていないと、確認する前に「誰に確認すればいいのか」を調べる工程が挟まります。
本来は数分で済む確認が、相手を探し、都合を聞き、経緯を説明するところから始まる。 この「探している時間」は、どの業務の工数にも計上されません。
経路が決まっていれば、例外は例外のまま処理できます。決まっていなければ、例外が起きるたびに社内の地図を描き直すことになります。
この4つは、任せる業務そのものの話ではありません。
任せる側が、自社の判断構造を把握しているかどうかの話です。
人に任せるか仕組みに載せるか
4つのうち一つでも決まっていない状態で業務を任せると、任せた先が人であっても仕組みであっても、同じことが起きます。
人に任せた場合は、確認のやりとりとして表れます。
指示を出す、質問に答える、判断を戻す。作業は減っても、やりとりが増えます。
仕組みに載せた場合は、運用の形骸化として表れます。
ツールは導入されているのに、実際の判断は別のところで行われ、記録だけが後から入力される。
管理ツールとしては機能していても、業務は手動のまま残ります。
任せる相手が人か仕組みかは、この段階では本質的な違いになりません。
判断基準を持っていない状態で任せれば、どちらでも同じ結果になります。逆に、4つが決まっていれば、どちらに任せても機能します。
人を増やすか、仕組みを入れるか。
採用が回らないときに出てくるこの問いは、任せる準備ができてから考えるべきものです。準備がないまま選ぶと、選択そのものが空振りします。
社内の引き継ぎも同じ構造
ここまで採用業務を外に出す場面を前提に書いてきましたが、同じことは社内でも起きます。
担当者が変わるときの引き継ぎ、繁忙期に別部署へ一部を任せるとき、後任に業務をおろすとき。
判断基準が言葉になっていなければ、引き継ぎ書には手順だけが並び、判断は前任者の頭に残ります。
だから前任者に連絡が来続けます。
異動したのに、前の担当業務の相談が届く。それは、業務が引き継がれていないということです。
外注やAIへの委託は、この構造を見えやすくしているだけだと思います。
相手が社外や機械であれば、聞き返しがメールや履歴として残ります。社内で引き継ぐ場合は、隣で聞けてしまうために、業務が渡っていないことに気づきません。
聞き返せる関係があること自体は、悪いことではありません。
ただ、聞き返しで成り立っている状態は、任せた側にも受け取った側にも業務がきちんと渡せているのかどうかが見えにくくなります。
どの順で決めるか
4つのポイントが明確に決まっている会社は、あまり多くはありません。
管理部門が数名で回っていれば、明文化する時間そのものが取れないからです。
明文化していく順序としては、判断基準から入ります。基準がなければ、境界も役割も経路も決められません。
ただ、最初から完全な基準を作る必要はありません。必須条件と、判断が分かれる条件を分けるところから始めれば十分です。
次に、境界の扱いを決めます。
基準に収まらない案件が来たとき、誰が判断するのか。ここを決めておくと、境界の案件が滞留しなくなります。
境界は基準を精密にしても消えないので、精密化に時間をかけるより、決める人を決めるほうが早く効きます。
役割と経路は、この過程で自然に浮かびます。
基準と境界を整理していくと、いま誰が何を決めているのかが見えるからです。
決まっていないのではなく、決める人が定まっていないだけだった、という場合もあります。
また、すべてを決めきってから任せる必要はありません。
決まっていない部分を把握したうえで任せれば、戻ってくるものが予測できます。
予測できていれば、確認事項が戻ってきても業務は止まりません。
採用業務を外に出すこと自体は、有効な選択です。
管理部門が数名で回っている会社であれば、すべてを社内で抱える必要はありません。
ただ、任せる前に決めておくことがあります。
判断基準、基準の境界、役割の所在、確認の経路。この4つが決まっていれば、任せた業務は戻ってきません。
自社の業務のうち、いま判断が混ざっているものはどれでしょうか。棚卸しは、そこから始まります。
4つを決めるところから、実装まで
判断基準、基準の境界、役割の所在、確認の経路。この4つを自社だけで整理するのは、想像以上に時間がかかります。
日々の業務を止められないなかで、明文化の時間を確保する必要があるからです。
MMOLでは、業務の棚卸しからご一緒します。
何に判断が混ざっているかを洗い出し、人が担う部分と仕組みに載せる部分を切り分ける。
そして切り分けたあとのAI活用を含めた実装と、現場に定着するまでの運用設計まで支援します。
ツールの導入だけ、あるいは判断基準の整理だけでも構いません。まずは現状の棚卸しからご相談ください。
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